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2015-01-24 14:15    louis vuittonルイヴィトン長財布
「そうやな。けどな、もう日本に帰れる望みは失《う》せたんや。この船に乗って、マカオに帰ったとて、どんな暮らしが待っているというのや」 「ほんとや舵取《かじと》りさん。日本の夢ばかり見て、故里恋しさに胸を裂かれる思いで異国の中に暮らすのは、もうたくさんや」 「そうやろ。だがな、わしが死のう思うたのは、只それだけのことではあらせん。ミスター・ギュツラフかて、ミスター・キングかて、わしらをこうして親切に日本に送り届けようとしてくれたんや。わしら尾張の者かて、九州の船頭さんたちかて、あの人たちのうしろ姿に、幾度手を合わせたか、知れせん筈《はず》や。大砲まで外《はず》して、はるばると送ってくれたのに、そのお礼が大砲や」 「ほんとですたい。恥ずかしかこつです」 「あの人たちの親切を思うと、わしは日本人だで、死んで日本の無礼《ぶれい》をお詫《わ》びせんならんと思うのや」 「なるほど。それはまことですたい。腹かき切ってお詫びせねば申し訳なかとです」 「そうやろ。それにな、わしら七人ば送り届けようと思うて来たのに、またぞろ連れて帰るのは、さぞ迷惑のことやろう思うてな」  みんな黙りこんだ。キングたちは、江戸湾から逃れ出た時に言っていた。 「あんな近くから一時間も激しく攻撃されたのに、只一人の怪我人《けがにん》も出さずにすみました。これこそまことに奇蹟《きせき》です。神に感謝を捧《ささ》げましょう」  そう言って、キングたちは神に感謝の祈りを捧げていた。音吉はその時の驚きを忘れない。どんな時にあっても、先ず感謝すべきことを見つけ出すことのできるキングたちの生き方に驚いたのだ。だから、あの祈りを捧げることのできるキングたちは、決して自分たち七人を厄介《やつかい》もの扱いはしないと思う。その証拠に、乗組員たちでさえ、音吉たちの肩を叩《たた》いて元気をつけてくれた。だが、今、岩吉に言われて見ると、確かにその好意に甘えてはいられないと思う。どうせ生きる希望を失ったのだ。今が死ぬべき時かと、音吉は改めてうなずいた。 「舵取りさん。どんなふうにして死ぬんや」 「それや。首吊《くびつ》りもみっともあらせんし、海に飛びこんでも、助けられては死に損《そこ》なう。腹を切っては船を汚す……」  今朝から考えていた死に方は、何れも最良のものとは言えなかった。 「けどな、申し訳に死ぬのは、わしだけでいい」  岩吉はいたわるように音吉を見、力松を見た。 「いやじゃ。わしも死ぬ。わしも」  力松が泣き声を上げると、その泣き声に誘われて、誰もが泣いた。祖国に捨てられた耐え切れぬ淋《さび》しさが、号泣《ごうきゆう》となって部屋に満ちた。