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草間彌生ビトン財布編集

「浮気したんでしょう」 「冗談言うなよ」 「瑤子さんみたいないい人を……」  母親はそうきめてしまったような口ぶりであった。 「違うよ。そんなんじゃないんだ」 「可哀そうに。この寒いのにどこへ行ってしまったんだろう。お前、箪笥《たんす》や押入れをよく調ベてごらん」 「見たけど、いつも通りだ」 「ばかだねえ。瑤子さんが持って出た品を調べてごらんと言っているのよ。女だもの、何日も戻らない気なら、あれこれ持って行かなければならない物があるはずよ」  そうか、と思い、 「判った、すぐ調べて見る」  と言って邦彦はすぐ電話を切った。  部屋はあたたまりはじめていた。邦彦はまず寝室に造りつけになっている衣裳棚《いしようだな》の戸をあけた。自分の服と瑤子の服がずらりと並んでかけてあった。  邦彦は茫然《ぼうぜん》と立ちつくしてしまった。手がつけられない感じなのだ。どれもこれも瑤子の衣裳には見憶《みおぼ》えがあった。しかし、それでいながら、なくなっている物の見当がつかないのである。  自分は妻のことを何も知っていなかったのではないか。邦彦はそう思った。     5
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